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2014年10月18日 (土)

『内気な天使たち』(30)

  オトコハ、ミンナ、オオカミ?

 

  今日は、十二月二十四日、クリスマス・イヴの日である。実は、この日

は、私の妹の誕生日でもある。彼女は、私の生まれ故郷・熊本で保母を

している(当時)が、三人の子の母親でもある。


          Photo_4

  その長男が、本校の生徒たちと同じ中学三年生(当時)で、来年、高校

受験を控えている。

  今朝、いつものようにスクールバスを待っていると、停車する前のバス

の中で、愛ちゃんが、私に気づいてくれた。 

  彼女は、バスから降りると、不自由な足で、私のところまで歩いて来た。

だが、何を思ったか、彼女は、私を無視して、昇降口に立っている本田

先生のところへ走って行った。 

 

  これを見た本田先生曰く。「それ、失礼だよ。さあ、この先生のお名前

は?」と、私の方を指して、彼女に問われた。 愛ちゃんが答える、「メガネ

の先生」と。彼女は、いつの間にか、私の名前を忘れてしまっていた。 

  すると、今度は、小学部時代、彼女の担任だった真田先生(仮名)が、

ご自分の方を指さして、彼女に問われる。「私は、誰?」と。 

 だが、彼女は、「えーと」と言ったきり、答えられない。すかさず、真田

先生が言われる。  「元担任の名前を忘れちゃ、駄目じゃないか」と。 

  それを、横で聞いていた加藤先生、曰く、「現担任(=加藤先生)の名前

を忘れるんだから、元担任の名前なんて」と。まさに、養護学校ならでは

の、一風景である。



  愛ちゃんの不自由な右手を支えながら、階段を昇ろうとすると、彼女が

言う。「オトコハ、ミンナ、オオカミダヨ!」と。

 私は、余りの唐突さに、思わず吹き出してしまった。 

  私の笑い声に気づかれた女教諭の石橋先生が、問われる。「どうしまし

たか?」と。私は、愛ちゃんが言った言葉を繰り返した。 

  すると、石橋先生は、口を顔全体にまで拡げ、笑い出された。

先生、曰く。「愛、そんなこと言ったら、渡邉先生、立ち直れないわよ」と。 

  すると、それを側で聞いておられた加藤先生が、続けられる。

「そう、渡邉先生は、オオカミだよ。知らなかったの?」と。

 愛の一言が、とんだ方向にまで発展してしまった。

 

  更衣室での手伝いを済ませて、B、C組合同の教室に入ると、そこで

は、「オトコは、オオカミナノカ、ドウカ?」という論争(?)が起こっていた。 

  愛ちゃん曰く。「うちのフミコサン(彼女のお母さん)が、ソウイッテタ」と。 

すると、加藤先生が、彼女に問う。「じゃ、愛。サンタさんは、オトコかオンナ

か?」と。愛が答える。「オトコ」と。

              Photo

  「じゃ、サンタさんもオオカミだね。お前、そのオオカミから、プレゼント貰

うわけ?」と、加藤先生が反論。愛は、窮した。 

  私は、何故か「援助交際」のことなどを想像しながら、二人のやり取りを

側で聞いていた。

 

  この深遠な(?)問題は、一日で結論の出る類いのものではない。だが、

生徒たちの発言は、時に極めて突飛である。だが、その突飛さゆえに、

ひじょうに楽しいものがあった。



 

  劇「たつこ姫」の練習





  今日(十二月二十四日)のA組の日直は、伊藤英樹だった。彼は、

二週間ほど、登校拒否をしていたが、この二、三日、学校に来ていた。 

  日直の彼は、「出席」を取りながら、みんなと軽く握手をする。小山

先生が、彼にみんなの名前を呼ぶように促される。彼は、小声で「アキラ、

マナブ、ムカイさん」と続けて、晴男の前まで来る。 

  すると、晴男は何を思ったか、自分から「ハ・ル・オ」と答えた。小山

先生が、「自分で言わない!」と、晴男を注意される。

 

  今日は、プレイ・ルームで、劇の練習だ。だが、「悪徳代官役」のワタル

の顔が見えない。すると、みんなが練習を始めようとしていた矢先、

ワタルが息咳きって部屋に入って来た。 

  彼は初め、ちょっとバツの悪そうな顔をしていたが、田中先生から、

手作りの刀を受け取ると、思わず嬉しそうな顔に変わった。

  劇の舞台は、田沢湖。―  時代は、江戸時代である。彼らの修学旅行

の話から始まり、急に江戸時代にタイムスリップするような設定である。 

  その間、「風になりたい」という歌が流され、雰囲気を盛り上げる。



  物語は、名主の家から始まる。そこには、機織り機が置かれ、お母さん

役の愛ちゃんが機を織っている。 

  だが、なかなか思うように機が織れない。そこで、機織りの上手な娘の 

たつこが呼ばれる。たつこは、のぞみが扮する。 

  彼女には、「ハーイ」という台詞だけが必要なのだが、この言葉が、なか

なか出て来ない。だが、発表日の二月八日までは、まだ間があるので、

だんだん慣れていけばよいと思う。


             Photo_2


 台詞をしっかりと言えそうなのは、ワタルと愛ちゃんとジュン君ぐらい

だろうか。だが、面白い味を出していたのは、「たつこの父親役」の晴男

である。 

  彼は、監督の土屋先生の指示に従い、極めて素直に口真似をする。 

たつこの機織りの腕前を褒める時の「上手だね」という言葉や「たつこ!」

と絶叫するところ、それに「ええっ!」と驚くところなど、なかなかのもので

ある。

 

  土屋先生が「チカレタビー」という台詞を覚えさせようとした時、彼は

ただ「ビー」と言ったまでだったが、その他は、ひじょうに従順に土屋先生

の指示に従っていた。

  何よりの役者は、やはり悪代官役のワタルである。彼は、憎々しそうな

代官役を、実に見事にこなしている。彼は、扇の要のような存在だ。

 彼がこけると、多分この劇は成り立たないだろう。そのことを、ワタルも

よく心得ているので、熱心に参加している。


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  今何をしているのか分かる生徒もいるが、その意味づけの出来ない

生徒が殆どである。だが私は、この劇は、きっと成功するだろうという

確信を抱いた。 

  それは、先生方の指導の確かさと、それに対する生徒たちの、何かを

やろうとする目の輝きを感じたからである。          【つづく】                     

 

 

 

 

 

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