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2014年9月25日 (木)

『内気な天使たち』(13)

   陶芸(粘土)の時間

 

 今日(四月二十二日)は、中一担任の本田先生のピンチヒッターで、

陶芸コースのお手伝いをした。担当は、加藤先生と井田先生である。 

  加藤先生が初心者の御世話、井田先生が、ある程度できる生徒たちの

指導をしておられる。生徒のリーダーは、三年A組の木下ジュン君である。

彼が、「起立!」、「礼!」と号令をかける。なかなか立派である。

           Photo



  私は、中一の中山勇太君と藤山清美ちゃんの間に座って、一緒に粘土

をこねることになった。 

  勇太は、両手の指が、普通には動かない。思うようにならないもどかしさ

からかどうか分からないが、粘土を口に入れて食べるような所作をする。

それが、決して冗談ではないので、一瞬ギョッ!とする。



  彼が余りにも落ち着きがないものだから、向かいに座っていた加藤先生

が、「勇太、こっちに来て座れ。はい、吉野と交代」と、彼の席を替えた。 

  中山君は、どうも私の手に負えないようだ。 

  代わりに座った吉野光君(仮名)は、席に着くなり、「わあ、すごーい!」と

同じ言葉を口走りながら、粘土をこね始めた。家でお母さんに言われてい

る言葉を、オウム返しに言っているのだろうか。

 

  私の左隣りの清美ちゃんは、私の方を向いてニコニコしているが、全然

手が動いていない。ここで何をすべきなのか全く認識できていない様子だ。

よく見ると、左の手が小刻みに震えていた。 

  「はい、清美ちゃん、こうやってこねるんだよ」と言っても、彼女は、私の

眼鏡を、ニコニコしながら見ているだけだ。それでも、一緒にこねていると、

どうにか幾つかの灰皿が出来た(*下の写真は、イメージ)


           Photo_2
 

  ジュン君たちは、井田先生と一緒に、大物に挑戦している。とても真剣な

まなざしだ。 

 初心者は、先ず粘土に慣れ、それをこねて、基礎的なもの(灰皿や小さ

な置物、それに文鎮など)を作る。

             Photo_3


  今日は、加藤先生と、大学時代に習ったデビッド・リースマンの話などを

して過ごした。「わあ、リースマンなんて、何十年ぶりだろう」と、加藤先生

は、白い歯を見せて快活に笑われた。私も、たいへん懐かしい思いだった。


  後片付けは、みんな一緒だ。椅子を机を載せる時、私が少々ふざけ

がら、ちょっと一回転させると、清美ちゃんは、よほど面白く感じたのか、

キャツ、キャツと笑い出した。可愛い一年生だ。彼女は、私の姪と同い年

なのだ。 

  みんなと一緒に雑巾がけをする。それこそ何十年振りかの雑巾がけが、

なぜか楽しい。殆ど手足を使うだけの仕事なのだが、この快い感じは、

一体どこから来るのだろう。


 

  離任式

 

   今日(四月二十五日)は、本校を離れる先生方の「離任式」の日だ。

陽光の射す明るい体育館には、すでに小一から中三までの生徒達が腰

をおろしている。

   離任なさる八名の先生方が入場される。それを、みんが拍手で迎える。

先生方が、用意された椅子に着席なさると、司会の先生が、式の始まりを

知らせ、先ず校長先生の挨拶があった。その後、離任される先生方が、

T養護での教員生活の長い香山先生(仮名)から、御一人おひとり、みん

なの前に立って、お別れの挨拶をされた。 

 

  K高等養護学校に転任された香山先生は、十一年間、本校で過された

とのこと。ということは、全生徒のことをご存知なのだ。 

  この式でも、中一の吉野光君を呼ばれ、二人で絵本の朗読をなさった。

擬音の多い絵本だった。吉野君は、心なしか恥ずかしそうだったが、そこ

には、型通りの離任式にはない温かさがあった。

 

  先生方の中には、N島の養護学校に転任なさった池田先生(仮名)も

おられた。 

 先生が、「N島には、みんなの好きな電車やバス、それに地下鉄はあり

ません」と仰ると、生徒ではなく先生方やご父兄が爆笑なさった。

          Photo_4

 

  池田先生は続けられた。「だけどね、海の水は綺麗だよ」と。何気ない

言葉の奥に、生徒たちに噛んで含めるように語られる先生の思いやりを

感じた。

  その他、都内の各養護学校に転任された先生、それに普通中学に移ら

れた先生もおられた。 

  養護学校の先生方は、概して話が上手いと思った。それに、何とも味の

ある先生が多いと感じた。 

  やはり、普通の学校とは違い、ハンディを背負う生徒たちと接するうちに、

何かしら人の痛みのようなものを感じられるからだろうか。先生方に感じる、

あの深みと味わいは、一体何なのだろうか?

 

  転任される先生方に、生徒の代表から花束が贈呈された。三年生は、

のぞみちゃんと愛ちゃんが、その渡し役となった。

  その後、みんなで校歌を歌った。「そらはかがやき  とりはうたい 

 みどりのおかにとつづくなみき  なかよくげんきに  まっすぐすすもう」。 

  シンプルだけど、とてもいい校歌だった。 この歌詞の意味を理解できる子

は、殆どいないかも知れない。いても、数える程だろう。 

  でも、この校歌は、みんなが元気に生きていってほしいという応援歌な

のだ。

 

  先生方が退場なさる時、生徒や先生方、それにお母さん達が、花道をつ

くり、両側から思い思いに声を掛けられた。 

  そこには、何とも言えない温かみと明るさがあった。彼らに応える先生方

の後姿にも、晴れ晴れとしたさわやかさが漂っていた。      【つづく】  




 

 

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