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2014年9月20日 (土)

『内気な天使たち』(11)

   愛ちゃんとのマラソン練習




  今日は、中学全学年合同でのマラソン練習だ。全学年四○名といった

ところだ。 

 様々な生徒がいる。待ち時間、ちょっと退屈したのか、木の葉をむしり取

り、むしゃむしゃと食べている子、ニヤニヤしながら辺りを徘徊する子、

それに急に泣き出す子などである。

 

  泣き出した一年生野田治君(仮名)の担任、本田先生(仮名)に、その

理由を尋ねると、たぶん自分の予定になかったことをやらされるので、

抗議の意味もあるのではないか、ということだった。

 

  一年生のマラソン練習は、いつも屋上で行われる。ところが、今日は

合同で、A公園で走るものだから、それが不満だったらしい。 

  確かに、彼らの中には、新しい変化を極端に嫌がる子がいる。極度の

ストレスを感じるのだろうか。

 

  準備体操をする。生徒の中には、腰が曲がらない子もいる。前や横に手

を振る際にも、ただ上にだけ手を挙げてしまう子もいる。結構、個性的な

準備体操である。

 

  運動能力別に伴走する先生が振り分けられる。私は、三年生の児島

愛ちゃん(仮名)の伴走をすることになった。 

  愛ちゃんは、進行性の癲癇で、用心のため、頭にプロテクターをはめ、

顎の下に、ガーゼのハンカチを付けている。よだれをカバーするための

ものだ。

 

  それを、担任の石橋先生(仮名)が、必要に応じて取り換えられる。

愛ちゃんは、右の手足が不自由で、思うように走れない。 

  私は、彼女の完全には開かない右手を支えるように持ち、一緒に歩い

た。途中、女の子らしく、色々と話しかけてくれる。

 

  テレビの番組では、「ゲゲゲの鬼太郎」と「セーラー・ムーン」が好きだっ

たとのこと。弟が一人いること、家では、オカメインコを飼っていること、

お父さんは鳥好きで、鳥たちの名前をよく知っていることなどを語って

くれた。          



 
  公園内を見渡すと、そこには、のどかな風景があった。犬がプリスビー

を追っかけていたり、保育園児が小山の上を走り廻っていたり、幼稚園

児が鳩を追っかけ廻したりしている。 いかにも楽しそうだ。 

  私たちの直ぐ後ろを走っていた山本さんが、突然、アメリカタンポポを

見つめながら、クスクスと笑い出した。彼女には、タンポポが一体どのよ

うに見えたのだろうか。

       
                    Photo


   愛ちゃんが言った。「あっ! ハトが三匹いる」と。そこで私は、「愛ちゃん、

ハトを数える時は、三羽と言うんだよ」と言うと、「三羽ね」と答えてくれた。

素直だ。 

  確かに、三匹でも三羽でも問題はないのかも知れない。でも、何事も

「基本的なこと」を疎かにはできないと思った。

                           

Photo_2

ゴールに達した時、日野先生(仮名)から言われた。「愛ちゃん、今日は、

いつもより 長い時間がかかったわね」と。―  少しお喋りし過ぎたみたい

だ。 

  生徒各自が、自分の体に合わせて頑張っている。私たちも、次回は、

もう少し走る(あるいは歩く)ことに専念しよう!

 

 

   新入生歓迎会




  今日(四月十八日)は、屋上で、新入生歓迎会があった。十一名の

新入生だが、二人欠席して九名の新一年生が、弧状に並べられた椅子

に腰をおろした。 

  指先を鼻に突っ込んでいる子、じっと下をうつむいている子、先生に抱き

かかえられる様な状態の子と、様々である。

 

  三年A組の木下純君が、加藤先生の指導で、司会をした。

  一年生一人ひとりが自己紹介をする。唯、マイクを持って何をするかが

分からず、じっとしている子が多かった。中には、マイクを口に入れる子

や、それをなめる子、それに自分の名前を言い終えた後、急に「ぞうさん」

の唄を歌い出す子もいた。 

  家でも、よく歌っているのだろうか。初め、何事かと思ったが、本人は、

とても楽しそうである。余程、好きな歌なのだろう。

 

  一通り挨拶が済むと、二年生の山本さんが、在校生を代表して「み・ん

・な・い・っ・し・ょ・に・が・ば・り・ま・し・ょ・う」と言い、彼女が右手を挙げた

かと思うと、みんなで、「エイ・エイ・オー」の掛け声を挙げた。何か独特

の雰囲気がある。 

  その後、ニ、三年生の有志が、これぞと思う新入生に握手を求めに行っ

た。いい意味でのスキンシップが、そこにはあった。

 

  それから、学年別対抗のリレー競走になった。これが、歓迎会の中に

組み込まれていたのである。 私にとっては、初めての体験だった。 

  だが、リレー競走とは言っても、みんな余り競走慣れしていないせいか、

先生からバトンを渡され、走るように促されても、なかなか走り出そうと

しない。 

  安達君は、「よーい、どん!」の合図が鳴っても、出発点で、ピョンピョ

ン跳ねている。 

  彼は、加藤先生にお尻を軽く叩かれながら、「さあ、安達走るんだよ!」

と言われるまで殆どその状態で、なかなか走ろうとはしなかった。 

  自分が今何をすべきかという認識も定かではないが、同時に、”競走

する”という観念が元々ないのかも知れない。

 

               Photo_3

  私は、三年の先生方のお手伝いをしている関係で、つい三年生を応援

してしまう。だが、今日の対抗リレーは、二年生が一番早かった。 

  しかし、右足が不自由で、マラソンの練習でも殆ど歩いていたB組の

愛ちゃんが懸命に走った時には、私は、思わず伴走してしまった。

彼女も、心なしか楽しそうだった。

 

  三人選抜の対抗リレーでの三年生アンカー清水君の走りは、実に見事

だった。全くの韋駄天である。伴走しても、追いつかなかった。 

  新入生歓迎会でのリレーというのは、本当に珍しいが、やはり、屋外

(たとえ屋上でも)で走り廻るのは気持ちのいいものだ。 

  このところ、デスクワークの多い私は、この快感を忘れていた。今日の

歓迎会は、この喜びを私に教えてくれた。心から感謝―。  【つづく】              

 

 

 


 

 

 

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