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2013年4月30日 (火)

非戦論の原理〔完〕(内村鑑三)

  人は、申しましょう。ユダヤ人の勢力は、大なりといえども、彼等に国土

なるものは無い。故に、彼等は、すでに亡国の民である。 

  誠に、その通りであります。ユダヤ人に、定限されたる国土はありません。 

しかし、それが即ち彼等が強い理由(わけ)であります。彼等は、世界を己

が国土となす者であります。

 

  彼等は、ランドグラッピング(国土獲得)という異邦人の誤謬より、夙(つと)

に(*早くから)脱しました。 

  彼等は国土を見ること空気を見るが如く、之を一国民の専有物として見

ません。ユダヤ人は、国土専有の念を絶って、より世界的な民となったの

であります。

                   Photo

  戦争の廃(や)まる時は、土地獲得の野心の絶える時であります。ユダヤ

人に、其割拠する国土の無いのは、其弱点ではなくして、かえって其強所で

あります。

  ユダヤ人に関すると同じことが、支邦人に関しても言われます。支邦人

は、ユダヤ人ほど偉大な民ではありません (*下の写真は、或る華僑の

家族、および親族たち

  しかし、之(ユダヤ人)に似て、戦争嫌いの民であります。 

     Photo_3

    而して、其結果として、繁殖力非常に強く、これまたややもすれば、
 

世界 を横領せんとする民であります。 

  列強は、武力を以て、支邦の国土を分割することが出来ます。 

しかし、支邦人を征服することは出来ません。 

  否な、支邦を取るの危険は、終に支邦人に取らるるの危険にあります。 

横浜、上海、香港等に於いて、日本人は名義を貴び、英人は権利を求め

つつある間に、支邦人は、徐々に実力を得つつあります。 

  支邦人は、国旗のために戦いません。実利のために戦います。 

故に、剣を用いずして、算盤(*下の写真)を用います。

                  Photo_4


 賤しむべしと言えば賤しむべしであります。慧(かしこ)いと言えば慧くあ

ます。 

 何れにしろ、算盤は、剣よりも強い武器であります。剣を以てする者が

斃れし後々までも算盤を以てする者は存(のこ)ります。

 

  かくて、人類の歴史は、戦争の利益を教えません。その害毒を伝えます。 

国は、戦争を以て亡びます。民は、戦争を廃めて栄えます。 

  世界は、徐々に戦争嫌いの民の手に渡りつつあります。


 

  戦争廃止の必要 

 

  こうは言ったものの、人は言いましょう。説明は誠に立派である。 

しかし、事実はやはり事実である。戦争を今、廃(や)めることは出来ない。 

 軍備拡張は、列強目下の最大問題である。 

詩人の夢想は、午錘(ひるね)の幇助(たすけ)とはなるが、実際問題を

解決するに足りないと。

                            Photo_10
 

  もし、そうならば止むを得ません。私共は、沈黙を守りましょう。しかし、

かりに私共は黙(だま)りまするも、神と天然とは黙りません。 

  神の律法(おきて)と天然の法則とは、政治家の評議に関わらず行なわ

れます。 

  エホバもまた智慧あるべと聖書に記してあります(イザヤ書

三十一章二節)。

 

  実際問題は、事実、政治家の評議に由て解決されません。 

彼等は、実際、如何なる大問題を解決しましたか? 彼等は、戦争を

議決して、其後始末に困っているではありませんか。 

  夢想家は詩人ではなくて、反って彼等政治家であります。 

神を知らず、天然を学ばない彼等は、間違いより間違いへと陥りつつ

あります。

  戦争は廃みます。必ず廃みます。これは、私共非戦論者が非戦論を唱

えるからではありません。神が之を命じ、天然が之を要求します故に、

終に必ず廃みます。

          Photo_8

  もし進化の理が今日、直に無に帰するものならばいざ知らず、宇宙と

人類とが今日まで取り来たりし経路に由て進みますならば、戦争は終に、

必ず廃みます。 

  人類が進化するに従って、戦争の害は、益々増して、其益は、益々減じ

て来ます。従って、戦争は勝つも負けるも、大なる損害たるに至ります。

 

  戦争は、其代償を償わず、其目的を達せざるに至ります。 

而して、其時に至れば、国民は否(いや)でも戦争を廃(や)めます。 

こうして、かかる時は、時々刻々と近づきつつあります。 

  列強目下の軍備増大の如きも、かかる時機の到来を示すの外ありません。 

列強は今や餓死するか戦死するかの境に達しつつあります。 

         

  戦えば敵の手に斃れ、戦わざれば債者の手に斃れんとしつつあります。
 

ここにおいて、国民は、生きんと欲すれば戦争を廃むより外に手段の無き

域に達しつつあります。 

  而して、国民の生存欲の絶えざる限りは、彼等は余儀なくせられて戦争

を止めます。

          Photo_7


  かかる場合に臨んで最も慧(かしこ)き国民は、最も早く戦争を止める国民

であります。 

 こうして、最も愚かなる国民は、最後まで戦争と、その準備を継続する国民

であります。 

          Photo_9

  国力を益なき戦争のために消費し尽くして、彼等は、まさに開けんとする

平和的競争場裡に入って、憐れなる敗北を取らざるを得ません。 

  獅子や虎の如くに勢力の大部分を牙や爪に消費せずして、哲学者や慈善

家の如くに、之を脳と心に蓄え置かなければなりません。 

            Photo_5

  之を為さずして、目下の勢いに駆られ、万事を犠牲に供して戦争の準備

を為すが如き、之を愚の極と言わざるを得ません。   【了】

 (『聖書之研究』明治四十一年八月)

 

 

 

 

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