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2013年2月25日 (月)

上杉鷹山(完 )

 彼が慈愛に満ちた父親であったことは言うまでもない。彼は、子供たち

の教育のために、熱心に努力した。子供たちの教育は、彼の大切な義務

の一つであることを、彼はよく知っていた。 

  なぜならば、封建政体の世襲制度の下では、領民の未来の幸福は、

ひとえに彼が後にのこす統治者の人と成りにかかっていたからである。

 

  「貧民の実情に通じる」教育を、彼は息子たちに授けた。これは、彼らが、

その大きな使命を忘れ、それを私利私欲のために、犠牲にすることのない

ようにと、願ってである(*下は、彼が後継の藩主に遺した伝国の辞)

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    彼が子供たちの上に施した教育の方針を知るよすがとして、彼が孫娘

たちに与えた美しい手紙のかずかずの中から、一つを選んで掲げよう。

これは、父の家を去って都の配偶者のもとに行こうとする姉娘に宛てたも

のである。 

  人は、三つの感化の下に、一人前の人間となります。その父母と、

先生と、主君の恩とがそれです。そのどれもが、測り知れぬほど深い恩 

ではありますが、とりわけ深いのは父母の恩です。・・・・ 

  私どもが、この世に生を享けたのは、父母あればこそであります。この

体は、父母の体の一部分であることを、片時も忘れてはなりません。

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   それゆえ、いささかの偽りもない心をもって父母に尽くされよ。心に

誠意さえあれば、たとえ失敗したとしても、それほど的はずれなことはな

いものです。 

  また、知恵が足りないゆえに物事が手に余ると考えてはなりません。

その及ばぬところを誠意が補うのです。・・・・ 

  国を治めることは、あなたの力に余る大変なことのように見えますが、

国の根本は、よく整った家庭にあるのです。そして家庭を整えようと思 

えば、夫婦の間が正しい関係なくてはなりません。源が乱れている

ときに、どうして末の整うことが望めましょうか?・・・

 

  年若な婦人は、とかく着物に心を奪われがちなものですが、これまで

に教えられて来た質素の習慣を忘れてはなりません。 

  養蚕その他の婦人の仕事に精を出すとともに、和歌を詠み、歌書を

ひもとくなどのことによって、心を養われよ。 

  しかし、教養や知識そのもののために、それらを追い求めるようなこ

とをしてはなりません(*下は、「百人一首」)

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  学問の目的は、身を修める道を学ぶことにあるのですから、善を勧め

悪を避けるような学問を選ぶことが肝心です。 

  和歌は、心をなごやかにし、これをたしなめば、月や花にも心が動き、

情操が高められます。・・・・ 

  あなたの婿君は、父として民を教え、あなたは、母として民を愛した

ならば、民は、あなた方を父母として敬うようになるでしょう。これに

勝る喜びが、世にあるでしょうか? 

  くれぐれも、そちらの御両親様に孝行の誠を尽くして、お二方を慰め、

また婿君に対しては、おだやかな心で従うことを心がけられよ。 

  願わくは、わが娘が限りなく栄え、わが国にふさわしい有徳の婦人と

して尊敬されるに至らんことを。・・・・
 

    いとしき娘の都へ旅立つに際して 

  春を得て花すり衣重ぬとも 

                  わがふるさとの寒さ忘るな 

                                                治憲

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  骨身を惜しまず働いた節制家の鷹山は、七十年間、変わらぬ健康に

恵まれ、青春時代の大志の大方を実現させた。― 

  すなわち、彼の藩が確固たる基礎の上に立ち、領民の生活が十分に

安定し、領国全体が豊かに甦るのを、彼はその目で見たのである。 

  かつては一藩の力を集めても五両の金を調達できなかったものが、

今は、一万両の金さえ、即座に調えることができるようになった。

 

  このような人の最期が安らかでないはずはない。文政五年(一八

二二年)三月十九日、鷹山は、最後の息を引き取った。

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  領民は、自分らの肉親の祖父母を失ったように泣いた。あらゆる階級

の人々の悲しむさまは、ここに述べることもできないほどである。 

  葬送の当日は、悲しみの群衆数万が、道筋を埋めた。両手を合わせ、

頭を垂れ、声を挙げて泣くこれらの人々の歎きに、山や川や木々まで

が和したと、その光景が記されている。
 

  〔そして、進歩した政治機構や、ベンタムやミルの経済学や、哲学的評

論とキリスト教的道徳等々―に加えて、なおそれ以上のものを有する

われわれもまた、その「父母の恵み」によって、かつてこの世に存在した、

この偉大な霊魂の死を悲しまずにはいられない。 

  憲法上の口論を、世の終わりまで続けても、鷹山が生前に成し遂げた

事績に及ぶことはできないであろう。

 

  彼のような君主を再び戴くことは望めないであろうゆえに、われわれは、

封建制度に別れを告げ、西欧の発明にかかる投票制度をまねて、これを

採用したのである。 

  だが、いつの日か、すべての悪者が影をひそめ、すべての政治家が

みな鷹山のようになった暁には、われわれは、「新しい封建制度」を、

われわれの間に打ち立てよう。 

  そのときには、われわれはすべて満ち足りて、欠けるところなく、喜び

にあふれて、悲しむことはないであろう。〕  【了】 

  (下の写真は、上杉鷹山を心から敬愛したジョン・F・ケネディ大統領)

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