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2012年12月31日 (月)

デンマルク国の話(3)

  ユトランドは、デンマーク(*下の地図:同国は、400の島嶼から成る)

半分以上であります。しかして、その三分の一以上が、不毛の地であった

のであります。

 面積一万五千平方マイル(=四万三千平方キロメートル)のデンマーク

にとりましては、三千平方マイルの昿野は、過大の廃物であります。  

              Photo 

   これを化して良田沃野となして、外に失いしところのものを、内にありて

償わんとするのが、ダルガスの夢であったのであります。 

  しかして、この夢を実現するにあたってダルガスの執るべき武器は、ただ

二つでありました。

 

  その第一は、でありました。その第二は、でありました。荒地に水を

漑(そそ)ぐを得、これに樹を植えて植林の実を挙ぐるを得ば、それで事は

成るのであります。事は、いたって簡単でありました。しかし、簡単ではある

が、容易ではありませんでした。 

  世の御(ぎょ)し難いものとて、人間の作った砂漠のごときはありません。 

もしユトランドの荒地が、サハラの砂漠のごときものでありましたならば、

問題は、はるかに容易であったのであります。 

  天然の砂漠は、水さえこれに漑ぐを得ば、それでじきに沃土(よきつち)と

なるのであります。

 

  しかし、人間の無謀と怠慢とによってなりし砂漠は、これを恢復するに、

最も難いものであります。しかし、ユトランドの荒地は、この種の荒地であ

ったのであります。 

  今より八百年の昔に、そこに繁茂せる良き林がありました。しかして、

今より二百年前までは、ところどころに樫の林を見ることができました。

         Photo_5

 

                     Photo_7

  しかし、文明が進むと同時に、人の欲心はますます増進し、彼らは土地

より取るに急にして、これに報ゆるに緩(かん)でありましたゆえに、地は、

時を追うてますます痩せ衰え、ついに四十年前の憐れむべき状態(あり

さま)に立ちいたったのであります。

 

  しかし、人間の強欲をもってするも、地は永久に殺すことのできるもので

はありません。 

 神と天然が示す或る適当な方法をもってしますれば、この最悪の状態に

おいて、ある土地をも元始(はじめ)の沃饒に返すことができます。 

  まことに、詩人のシラー(*ドイツの詩人、劇作家、思想家、歴史学者: 

1759~1805
*下の肖像画)の言いしごとく、天然には永久の希望あり、

壊敗は、これをただ人の間においてのみ見るのであります。

      

             F
         

 まず溝を穿(うが)ちて水を注ぎ、ヒース(*下の写真)と称する荒野の植物
 

を駆逐し、これに代わるに馬鈴薯ならびに牧草をもってするのであります。 

このことは、さほど困難ではありませんでした。

                Photo_2

 
  しかし難中の難事は、荒野に樹を植えることでありました。

このことについて、ダルガスは、非常な苦心をもって研究しました

  植物界広しといえども、ユトランドの荒地に適し、そこに成育して、

レバノンの栄えを呈(あら)わす樹はあるやなしやと、彼は、研究に

研究を重ねました。しかして、彼の心に思い当りましたのは、ノルウェー

産の(*日本で言うドイツトウヒのこと:下の写真)ありました。

  これは、ユトランドの荒地に成育すべき樹であることは分かりました。

           Photo_4

  しかしながら、実際、これを試験(ため)してみますと、思う通りには行き

ません。

  樅は生(は)えは生えまするが、数年ならずして枯れてしまいます。ユト

ランドの荒地は今や、この強硬なる樹木をさえ養うに足るの養分を存(の

こ)しませんでした。



  しかし、ダルガスの熱心は、これがために挫(くじ)けませんでした。彼は、

天然はまた彼に、この難問題をも解決してくれることと確信しました。ゆえ

に、彼は、さらに研究を続けました。

  しかして、彼の頭脳(あたま)にフト浮かびましたことは、アルプス産の

小樅(こもみ:ヤママツ:下の写真でありました。もし、これを移植したら

どうかと、彼は思いました。

                           Photo_3

  しかして、これを取り来りてノルウェー産の樅の間に植えました時に、

奇なるかな、両種の樅は相並んで成長し、年を経るも枯れなかったので

あります。ここにおいて、大問題は解けました。

  ユトランドの荒野に、初めて緑の野を見ることができました。緑は、希望

の色であります。ダルガスの希望、デンマークの希望、その民二百五十万

の希望は、実際に現われました。

  しかし、問題は、いまだ全く釈(と)けませんでした。緑の野はできました

が、緑の林はできませんでした。

  ユトランドの荒地より建築用の木材をも伐(き)り得んとのダルガスの野

心的欲望は、事実となって現わせませんでした。樅は、ある程度まで成長

して、それで成長を止めました。

  その枯死(かれること)は、アルプス産の小樅の併植をもって防ぎ得まし

たけれども、その永久の成長は、これによって成就(とげ)られませんで

した。

                          Photo_6

  「ダルガスよ、汝の預言せし材木を与えよ」と言いて、デンマークの農夫

らは、彼に迫りました。

  あたかも、エジプトより遁(のが)れ出でしイスラエルの民が、一部の失敗

のゆえをもって、モーセに責めたと同然でありました。

  しかし、神は、モーセの祈願(ねがい)を聴きたまいしがごとくに、ダルガ

スの心の叫びを聴きたまいました。

  黙示は、今度は、彼に臨まずして彼の子に臨みました。彼の長男をフレ

デリック・ダルガスと言いました。彼は、父の質(たち)を受けて、善き植物

学者でありました。

 彼は、樅の成長について、大いなる発見をなしました。 【つづく】

   (*後記:いつも、ご愛読くださいまして、本当に有難うございます。

                正月三ヶ日は、お休みいたします。

        皆さま、どうか、よい御年をお迎えくださいませ。)

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