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« 『消費税増税「乱」は終わらない』」を読んで(3) | トップページ | 山陰・心の旅(一.出雲編) »

2012年10月13日 (土)

『消費税増税「乱」は終わらない』を読んで(完)

  ところで、今日、小泉・竹中時代の「新自由主義」が息を吹き返すような、

許し難い勢いや状況がある。 

  ここで、植草氏の語る言葉は、ひじょうに含蓄がある。彼は言う。 

  「竹中さんは『頑張った人が報われる社会』といっていました。通常の

日本語の意味で、頑張った人が報われるのであれば間違いではないと

思うんです。 

  悪い話じゃない。ところが、竹中さんが言う『頑張った人が報われる』という

のは、例えば、金融の分野で大儲けをする。で、会社を上場させて、株式を

分割して、株価を吊り上げて錬金術のように巨大な不労所得を得る。

 これを竹中さんは『頑張った人』と呼んだわけです。 

  これは、『頑張った』のではなく、『うまいことをやった』にすぎません。

『うまいこと』をやるために、法律の抜け穴をくぐってきているかも知れませ

ん」と。Photo

 

  まったく、その通りだと思う。

  ここには、竹中の欺瞞と悪辣さを見事に看破した植草氏の正しさと限りな

い明晰さが、遺憾なく発揮されている。 

  とりわけ、植草氏が強調するのは、次の点だ。同氏は、こう力説する。 

  「新自由主義の流れを民間部門で放置すると、格差はさらに拡大します。 

企業が労働者を消耗品として扱うことを許してはならないのです。 

Photo_2
  現在の時代環境を

踏まえると、分配お

よび再分配における

政府の役割は飛躍

的に大きくなってい

ることを強調しなけ

ればなりません。 

  成長論が分配の

格差容認論とセット

になってしまってい

ることが、現代日本の一番の問題じゃないかと思います」と。

(*直ぐ上の写真は、少し自信無さそうな竹中氏。でも、案外、

     これが、彼の本質かも?)
 

  ひじょうに明快な主張だ。特に、植草氏の最後の言葉に注目したい。 

益々深刻化する国内の格差問題、かつて、それを助長・増幅させた小泉・

竹中政治は、もっと厳密に告発されなければならないであろう。 

                   Photo_3

  その点に関する植草氏の明晰な分析は、実に心地よい。 

事実、先ほどの「頑張った人が報われる」という言葉に関して、同氏は、

次のように述べる。 

  「『頑張った人が報われる』という話ですが、世の中で本当に頑張っている

人はいくらでもいます。 

  ラーメン屋を経営して、汗にまみれて朝から晩まで働いて、年収がいくらに

なるのかという話です。 

  大企業は正社員を一握りしか採用せず、大多数の若者がフリーターに

なって年収が二○○万に届かない。この人たちが一千万人いる。 

    Photo_4

   

  懸命に働いているのにそこから抜け出すことができない。 

これを『頑張った人が報われない社会』と言うんです。 

『頑張った人が報われていない』現実を放置して、きわどいことをやって

億万長者が生まれることを『頑張った人が報われる社会』だと絶賛した

竹中さんの感覚が、いかれてしまっていたのだと思います」と。

Photo

 

 そう 、確かに、竹中の感覚は、”いかれてしまっていた”のだと思う。 

むしろ、彼は、まったくの”確信犯”だったと思うのだ。

  この言葉に続く、深く、かつ鋭い植草氏の分析に対して、斎藤氏は、

「なるほど、僕はずいぶん甘かった」と、正直な思いを吐露する。

  この両者の正直さ、真摯さが、読む者に好印象を与える。

 事実、両者に、この真の謙虚さがあるゆえに、この対談は、まことに

実り豊かで、魅力的なものになっている。 

  そして、この両氏が合意することは消費税に頼るのは最後にすべきだ」

ということである。



  第三日目は、両者による忌憚の無い対談の形となる。
 

そのテーマは、「恐るべし、増税後の世界」である。また、その副題は、

「まだあるチャンス」となる。この言葉こそ、両氏が、読者に最も伝えたいこ

とだと思う。

 

  さらに、対話は、「消費税なし」にしたときの財源調達の途は、という問題

に発展する。この点に関して、斎藤氏は、次のように論じる。 

  「富裕税はぜひ導入すべきでしょう。・・・・ 

  とにかく富裕税の新設や所得税の累進強化が最優先です。・・・・ 

  消費税に頼らない財源の基本的な問題は、応能負担でいくべきだという

ことです。 

応能負担の原則で、仮に財源が本当に足りないんであれば、消費税以外

の増税税目というのが決まってくる。 

  それは所得税の累進の強化であり、法人税の適正化であり、例のメガバ

ンクみたいなところからとる。 

  年金生活者がもとはと言えば自分のお金なのに年金にも課税されている

のと比べれば、どれほど理不尽なのかがわかります。 

  彼ら(メガバンク)は公的資金を注入されながら税金は取られないみたい

なアホなことになっている。彼らは無茶苦茶儲けまくったわけですから、そう

いうところからしっかり取ること。それと宗教法人課税を適切に行う。大雑把

にいうとこんなメニューが考えられると思います。 

  消費税は、まさにその応能負担とは正反対であり、応不能負担原則みた

いになっちゃっている。新自由主義イデオロギーの下で消費税を基幹税に

するということは、弱いものいじめを社会の規範にするということです。・・・ 

  まさに強盗そのものの税制なのが現状だと思いますね。それの反対を行

くべきだと思います」と。

    Photo_5

  また、「サラリーマン税制は人々から『思考』することを奪った」と考える

斎藤氏にとって、同氏の立場とか考えの基本にあるのは、「個人一人ひとり

の尊厳を守りたい」ということである。 

  さらに、この両者が主権者であるわれわれに必要なことと考えるのは、

「思慮深さと積極的な行動」である。

 

  両者は、消費増税後の世界が、まことに恐るべきものであることを提示す

る。斎藤氏は、警鐘を鳴らして、次のように訴える。 

  「僕はね、やっぱり一人ひとりの生活を考えたときに、とんでもない歪んだ

社会になるのを怖れるんです。何度も言いましたが、消費税増税で転嫁が

できない中小零細が全部潰れる。・・・・ 

  第一次産業は全部派遣。自営業とか零細企業でやっていた人たちも、

もはやそういう業態そのものが成立しなくさせられるのですから、派遣以外

の働き方はまず見つからないでしょう。 

  だったら世の中全体でどういう働き方が残るか。エリートサラリーマンか、

派遣か失業者か、そのいずれかしかない。これしかない社会というのが僕

は怖くてならないんですよ」と。 

  日本経済の第一線で果敢に取材活動をしてきた斎藤氏の言葉だけに、

ひじょうに重いと感じる。


  また、「支配者はエネルギーと食糧と武器の独占を狙う」というテーマの

中で、植草氏は、自らの危機意識を、次のように吐露する。 

                Photo_6
  「私もいま、将来に向けた支配者たちの意図というのを感じています。

それは、本格的な植民地化の始動ということじゃないかと思うんです。 

  その支配者とは誰なのか、アメリカなのかどうなのか、いろんな見方が

ありますが、それはともかく、ごく少数の巨大資本がいろんな意味で圧倒

的な力を持っているときに、彼らが人々を従属させたり隷属させたりする

手法というのは、人々が生きていく上で必要不可欠なものを握ってしまう

ということでもあります。 

  それは、エネルギー、食料、そして武器です。この部分を握られてしまうと、 

人は隷属せざるを得なくなります。 

  だからこの勢力からすれば、日本が、そして世界が再生可能エネルギー

の方向に走るのを命がけでとめなきゃならないということになりますね。

鉱物資源とかウランなどに依存する状況を残さなきゃいけないのですから。 

  人間の叡知を考えると、太陽光、風力、水力、地熱などから永続的に

活用できるエネルギーを採取する技術は、進化する可能性が大いにある

と思います。 

  また、食糧は一番根源的なものだと思いますが、最近は農作物の種子

の管理で、種子の出来ない作物を遺伝子組換えで作ってそれを管理す

る・・・」と。

 

  このような極めて厳しい現状に対して、われわれ国民には、まことの

”思慮深さ”求められる。

 しかし、そのためには、与えられる情報が公正、かつ公平なものでな 

ければならない。 

  だが、現実には、それは今日の日本では、まさに「絵に描いた餅」で

ある。

 

 この情報空間の浄化のために、植草氏は「NHKの改革」を力説する。

彼は言う。 

  「ですから、私はこのマスメディアによる情報空間の占拠状態に風穴を

開けるとすれば、それはNHKの改革しかない思っています。 

  何かの機会を逃さずにまず政権交代を実現させる。そして、樹立され

た政権の最初の大事業として放送法の抜本改正を断行して、NHK(*

下の写真は、NHK放送センター〔=本部〕)運営を政治権力から離す。

                          Photo_7

  それは権力にとってマイナスになるかもしれませんが、それこそ国家

百年の計に立てば日本の民主化を図る上で、情報の民主化が一番大事

なので、昔のGHQが構想したように、視聴者の代表による放送委員会を

作り、これをNHKの最高意思決定機関とする。 

  NHKがバラエティまでやる必要はないと思います。人員も大幅に圧縮す

るべきです。視聴者が必要不可欠だとするものに限定して番組を供給する。

内容も放送委員会が審査する。 

  NHKが生まれ変われば日本の情報空間に風穴が開きます。それしか

方法はないと思っています」と。

 

  これは、多くの人々が共感できる言葉ではないだろうか。わが家でも、

まったく同じような事を語り合っている。 

  様々な意味で、国内の現状はかなり厳しい。だが、心ある人々が、共に

知恵を出し合い、連帯できれば、きっと日本は、いい方向に発展すると思う。

 

  この度の植草氏と斎藤氏の胸襟を開いた対話が、その好例であろう。 

両者の正義感や人々に対する慈愛、それに極めて優れた分析能力や

洞察力は、本当に貴重だと思う。 

  「わが身は朽ちるとも『我が心は流れの石にあらず』」と語る植草氏の

心が、 実に清々しい。 

  植草氏の「正義感」、人や国を思う心、公平さや公正さ、それに無心・無欲・

無償の愛は、同氏の誕生以来、少しも変わらなかったし、今後も全く変わ

ないと思う。 

 まさに、同氏の強靭な心は、“流れ(=周囲の圧力や変化)”で変わるよう

なものではないのである。

 

  皆さんも、本書を是非購入され、常に手許に置いて愛読なさることを、

私は、心から願いたい。それだけの価値のある良書だ。

 他の二書と共に、本著は、今後のわれわれの進むべき道を示す、偉大な

“羅針盤”になると思うのだ。 【了】

   (後記:明日より、21日〔日〕まで、私用のため、休筆いたします。 

      どうか、ご寛如ください。)

 

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