孫崎享氏『戦後史の正体』を語る(完)
(*孫崎氏は、続けます。)
日本の多くの人は、戦後の歴史の中で、日本の人々が、戦争の後、
飢え死にしなかったのは、米軍が助けてくれたお陰だと思っているん
ですけれども、事実は、それとは違ってね、あの厳しい折、日本人が
飢え死にするかと思われた時において、日本の国家予算の30%ぐら
いが、米軍の駐留経費に要っていたんですよ。
大蔵大臣だった)
石橋湛山(*右の
写真は、蔵相に
成り立ての頃の
湛山)が”軽減
する”ということ
を、米国に通告
する。
これに対して
(=これを理由に)、
石橋湛山は、大蔵
大臣を降ろされる。
その時に、石橋
湛山が、こういうことを言うんです。
「俺は、殺られてもいいんだ。
しかし、それに続く大蔵大臣が、また俺と同じように、米軍の経費縮小と
いうことを言えばいいんだ。(あるいは、)それも、殺られるかも知れない。
しかし、そういうような事を、2年3年続ければ、アメリカも諦めて、日本の
言う事を聞くようになるだろう」 と。まあ、石橋湛山は、そう言うんですよね。
じゃ、それに対して、日本の政治家が、どう対応したか?
石橋湛山が切られる前に、石橋グループが、30名ぐらい集まるんですよね。
そして、“この時代に、どう対応しようか”ということを協議する。
しかしながら、石橋湛山が切られてしまうと、どうなるか?
集まってきた(石橋氏を)支持する代議士は、3名なんですよね。
だから、この、米国に何かされた時に、しかし、それと同じ事を、もし繰り
返して行けば、結局は、米国も、日本側の言い分というのが有るというの
が分かって、”訂正”してくるんじゃないかと思います。
しかし、残念ながら、この流れと同じ事が、「普天間問題」で起こったわけ
ですよね。
「最低でも、県外」。
”沖縄県民が反対
している以上、これ
は実施できない”と
いうことで、「最低で
も、県外」と言った。
(*写真は、辺野古
海岸。同海岸は、”海洋
資源の宝庫”だと言われ
る。)
しかし、結局、その(=米国の)圧力でもって、鳩山首相は辞めるんです
けどもね。
じゃ、その後、日本の首相が、どのような対応をとったか?
同じように、沖縄県民の意向で、実施できないと、鳩山首相と同じような
形を主張したか? 全く、そうじゃないんですよね。
返したように、「対米
追随」をするというこ
とが、自分たちの生
き残りであるという
ことで、菅首相、
それから典型的な
のは、今日の野田
首相、この方が、
「対米追随」路線を、
今までの、どの首相
よりも、強く打ち出して来ている。
(*写真は、2010年4月22日、米国のアーリントン墓地を訪問し、
献花した菅氏。だが、同氏は当時、国家戦略相ではあっても、
まだ総理ではなかった。そんな彼が、なぜ国賓待遇?・・・・
写真は、「共同通信」)
しかし、こう見て行きますとね、これは、単に、野田首相一人の「個性」の
問題じゃないと思うんです。
長い歴史の中で、「対米追随」ということを主張する首相が、生き残れる。
そして、もしも、「自主」というものを強調しようとする人がいると、それは、
日本の組織全体が、一緒になって、これを潰していく。
その「組織」というのは、メディアであり、検察であり、政治家であり、
財界であり、官界である、と。
しかし、もう、こういうようなものは、日本の行きべき
道筋ではないんだと、もう一回、われわれが、アメリカ
との関係を、どうすべきかということを考える「時期」に
来ているんだと思うんですよね。
は、今、”われ
われが正しい
と思っていた
「原発」という
ものを、もう
一度見直そう!”
という思いと連動
しています。
(*写真は、国会
議事堂前に集結し
た脱原発デモの
人々)
それは、大手新聞社が言ったから、”そうしよう!”と
言うんじゃないんですよね。
あるいは、官僚が、”そうしよう!”と言ったから、そう
するんじゃない。
政治家が、”そうしよう!”と言ったから、そうするんじ
ゃない。
むしろ、既存の勢力、財界を含めて、既存の勢力が、
”原発を推進する”と言ってもね、多くの国民は、
”そうではない!”と、やはり、違ったものの考え方が
あって、それに向かって行く時期に来ているんだと思っ
たと同じようにね、私たちが、この日米関係の在り方と
いうものを問い直して、本当に、従来、アメリカに追随
しているのが、日本の利益になるのか、多分、そうでは
ない、ということで、日本の歴史を見直して、「自主」の
動きというものを、打ち出す時期にきているんじゃない
かと、まあ、そのために、戦後の日米関係の歴史を扱
った今回の本が、皆様のお役に立つんじゃないかと
思っています。
どうも、有難うございました。 【了】
(後記:次回は、私の「石橋湛山論」を、掲載いたします。)
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